【2021.02.07】KIFAボランティア研修会「使ってみよう やさしい日本語」
刈谷市国際交流協会では、毎年ボランティアのスキルアップを目的とした研修会を開催しています。今年のテーマは「やさしい日本語」。「やさしい」とはどういうことか、その必要性や活用方法について実践を交えながら考えました。初めてオンラインで研修会を行いましたが、協会親善ボランティアをはじめ、一般市民の皆さんや市外からの参加もありました。
日時:2021年2月7日(日) 13:30~15:00
場所:オンライン(ZOOM)開催
講師:御舘 久里恵(おたち くりえ)さん
(一般財団法人 自治体国際化協会 地域国際化推進アドバイザー)
まず「やさしい日本語」の基本について御舘さんからお話がありました。
多くの外国人が地域に暮らしている現在、自治体や医療現場などから多言語で情報提供することは有効である一方、「すべての言語を翻訳するには限界がある」「緊急時には、翻訳する分の時間的ロスがある」などの課題があります。
しかし、日本に暮らす外国人の約6割は日常生活に困らない程度に日本語を理解することができる、という調査結果もあり「やさしい日本語」を情報提供手段の一つとすることでその課題に対処することができます。
やさしい日本語が生まれたきっかけになったのは、阪神大震災。当時被災地に住んでいた外国人が、ニュース速報などの情報発信に使われる難しい日本語がわからず被害が出たという事例から、外国人によりわかりやすく、すばやく情報を伝えるやさしい日本語についての研究や実践の試みが始まりました。震災から25年以上経った現在では、多くの自治体でやさしい日本語を使った情報提供が行われています。
では、やさしい日本語を使うときのポイントは何でしょうか。まず、話を聞いているということを示すこと、完璧を求めないことなど相手を思いやる姿勢が大切です。また実際に話すときには、大切な情報だけ伝える、結論を最初に言う、主語をはっきりさせるなどの工夫ができます。普段日本人同士で話すときには曖昧な表現をしがちですが、それでは外国人には伝わらないことが多々あります。また、意外だと言われるのがカタカナ語をなるべく使わないこと。元の言語での意味と日本語で使われるときの意味が違っていたり、和製英語だったりするからです。
講座の後半では「やさしい日本語に挑戦!」と題して、事前課題として御舘さんから出題された様々な日本語をやさしい日本語に言い換えてみました。オンラインのため、答えはみなさんチャットに送ってもらいました。他の人はこの言葉をどうやって「やさしく」するのか見てみるのも、新たな気づきにつながりますね。
次に参加者数人ずつのグループに分かれて、マンションの郵便受けに届いた「断水のお知らせ」をどうやって近所の外国人に説明するかを考えました。どの情報が必要か?どうやって伝えれば良いのか?それぞれのグループで話し合いました。自身が断水を経験したことがあるか、マンション住まいかどうかで、参加者の間で必要だと思う情報に違いがあったグループもありました。
終了後のアンケートでは
「相手がどのくらい理解しているかによって言葉を選んで会話をする事が大切だとわかった」
「新しい気づきがたくさんあったので、今後、日本語が母語でない方々との交流に生かしたい」
など嬉しい言葉がたくさんありました。
やさしい日本語を使うときには情報や言葉の取捨選択が必要ですが、それぞれ必要な情報や日本語レベルは違うため、やさしい日本語に正解はありません。しかし御舘さんのお話から、難しく捉えすぎず、まず相手の立場に立って考え相手の話をしっかりと聴く姿勢を持つことが、やさしい日本語への第一歩だと改めて理解できました。今回の講座が、みなさんが「やさしい日本語」について考えるきっかけになれば嬉しいです。
<講師プロフィール> 御舘 久里恵(おたち くりえ)さん
鳥取大学教育支援・国際交流推進機構国際交流センター准教授。大学在学中より日本語ボランティア活動を始める。博士課程在学中の1999年度から大阪府にあるとよなか国際交流協会での日本語活動にアドバイザーとして参画し、地域日本語教育のあり方を模索した。2003年に鳥取大学に着任し、留学生対象の日本語教育、全学生対象のグローバル教育、日本語教員養成科目等を担当する一方で、地域日本語教育にも、実践・支援者養成・研究の面から関わりを続けている。2010年に『外国人と対話しよう!にほんごボランティア手帖』(凡人社)を共著で執筆。2015年度より一般財団法人自治体国際化協会 地域国際化推進アドバイザー、2016年度より文化庁地域日本語教育スタートアッププログラムアドバイザーを務める。